○江東区こどもの権利に関する条例
令和7年3月13日
条例第9号
こどものみなさん
みなさんは、誰一人代わりのいないかけがえのない存在です。
すべての人は、生まれた時から一人の人間として幸せに生きる権利を持っています。みなさんは、命が守られ、安心して育つことができます。まわりの人の愛情のもとで遊び、休み、学び、自分らしく暮らしていくことができます。
みなさんは、自分の意志で自分に合った選択をすることができます。しかし、成長の途中であるみなさんは守られる存在でもあり、まわりの人からの助けが必要になる場合があります。そのために私たちおとなは、みなさんを守るため、みなさん一人ひとりの声を大切に受け止め、みなさんにとって最もよいことができるように考えていかなければなりません。
みなさんは、人種や性別、障害や病気のあるなしなどにかかわらず、いかなる差別も受けません。誰もが同じように大切にされます。
みなさんは、様々な活動の場に参加し、自分の意見や思いをあなたらしい方法で表現することができます。
もし、みなさんが悩んだり、不安になったり、困ったりすることがあったら、おとなに相談したり、助けてもらうことができます。私たちおとなは、みなさんの立場に寄り添い、みなさんにとって一番よいことを一緒に考えていきます。
江東区には、地域に温かい思いやりの心が息づいています。私たちおとなは、地域全体でみなさんを見守り、みなさんを全力で応援します。
未来を担うみなさんは、たくさんの可能性であふれています。たとえ失敗しても何度でもやり直せます。
江東区は、こどもの権利をみなさんやおとなに理解してもらえるように伝えていきます。そして、みなさん一人ひとりが大切にされ、誰もが自分は生まれてきてよかったと思える社会を目指して、この条例を定めます。
(目的)
第1条 この条例は、日本国憲法や児童の権利に関する条約の考えをもとに、こどもの権利を大切に守るための基本となる考えを定め、こどもに関係する人たちが何をしなければならないのかを理解し、みんなで江東区(以下「区」といいます。)のこどもの健やかな育ちを支えていくことを目的とします。
(言葉の意味)
第2条 この条例で使う言葉の意味は、それぞれ次のとおりです。
(1) 「こども」とは、江東区内(以下「区内」といいます。)に住んでいたり、区内で学んでいたり、働いていたり、活動したりしている人の中で、まだ18歳になっていない人やこれらの人と同じく権利を認めることがふさわしい人のことをいいます。
(2) 「保護者」とは、こどもの親、里親その他こどもの親に代わりそのこどもを育てる人のことをいいます。
(3) 「区民」とは、区内に住んでいたり、区内で学んでいたり、働いていたり、活動したりしている人や団体のことをいいます。
(4) 「育ち学ぶ施設」とは、区内の保育所、幼稚園、学校や児童福祉施設などの、こどもが育ち、遊び、学び、活動するために利用する施設のことをいいます。
(大切な考え方)
第3条 こどもは、生まれた時から権利を持つ一人の人間として、生活のあらゆる場面において、その権利が大切にされます。
2 こどもは、自分の権利が大切にされることと同じように、自分以外の人の権利も大切にします。
3 おとなは、こどもに対して何かを行う時には、こどもにとって最もよいことができるように考えていきます。
(安心して生きる権利)
第4条 こどもは、安心して生きるため、次の権利が守られます。
(1) 命が守られ、愛され、大切にされること。
(2) 健康が守られ、必要な医療や行政サービスが受けられること。
(3) 身体的・精神的な暴力や虐待を受けないこと。
(4) 家庭の環境、国籍、文化の違い、年齢、性別、性のあり方、障害や病気のあるなしなどにより差別をされないこと。
(自分らしく育つ権利)
第5条 こどもは、自分らしく育つため、次の権利が守られます。
(1) 遊び、休み、学ぶこと、そのために必要な環境が整えられること。
(2) 様々な文化や芸術、スポーツ、自然などに触れて豊かな経験ができること。
(3) 自分の考えで仲間を作り、集まること。
(4) 自分の個性や可能性が大切にされること。
(守られる権利)
第6条 こどもは、自分の心や身体を守るため、次の権利が守られます。
(1) 健やかな育ちを害するものから守られること。
(2) プライバシーや名誉が守られること。
(3) 不安なことや困ったことがあった時に、おとなに必要な支援や助言を求め、おとなにしっかりと自分の思いを受け止めてもらうこと。
(自分の意見などを明らかにし、参加する権利)
第7条 こどもは、自分にかかわりのあることについて意見を伝えたり、様々な活動に参加するため、次の権利が守られます。
(1) 自分の意見などを言葉その他の方法で自由に表現し、家庭や育ち学ぶ施設、地域のおとな、区などに伝えること。
(2) 自分の意見などを考えるために自分にとって必要な情報をわかりやすく、おとなや社会から得られること。
(3) こどもの意見などは、おとなの意見と同じように大切にされ、おとなや社会に受け止められること。
(4) 自分の考えで様々な活動に参加すること。
(区の責務)
第8条 区は、こども、保護者、区民、育ち学ぶ施設や関係する人たちと力を合わせてすべてのこどもの権利が守られるための取組を進めます。
2 区は、この条例の考え方をもとにこどもの権利を守る取組を進めていくための計画をつくります。
3 区は、こどもに関係する様々な取組を行う時には、この条例の考え方をもとに進めます。
4 区は、こどもや保護者、区民、育ち学ぶ施設の関係者などにこどもの権利についての考え方を理解してもらえるように取組を進めます。
5 区は、育ち学ぶ施設や家庭、地域社会などで、こどもがこどもの権利について自ら学び、自分と自分以外の人の権利を大切にしあうことができるようになるための取組を進めます。
(保護者の役割)
第9条 保護者は、こどもにとって最もよいことを一番に考え、豊かな愛情を持ってこどもに接し、こどもの権利が守られるように努めます。
2 保護者は、必要に応じて、区や区民、育ち学ぶ施設などと力を合わせてこどもが健やかに育つように努めます。
(区民の役割)
第10条 区民は、地域全体でこどもを育てていくことを理解し、力を合わせてこどもの権利が守られるように努めます。
2 区民は、こどもが健やかに育つことができる環境づくりに努めます。
3 区民は、地域でこどもを見守り、区と一緒にこどもが安全に安心して過ごすことができるまちづくりに努めます。
(育ち学ぶ施設の関係者の役割)
第11条 育ち学ぶ施設の関係者は、こどもが自分で考え、遊び、学び、活動することができるようにするための支援を行い、こどもの権利が守られるように努めます。
2 育ち学ぶ施設の関係者は、育ち学ぶ施設がこどもの健やかな育ちのために大切な役割を持っていることを理解し、こどもを支援する力を高めるように努めます。
3 育ち学ぶ施設の関係者は、保護者が家庭で安心して子育てができるようにするための支援を行い、こどもの権利が守られるように努めます。
4 育ち学ぶ施設の関係者は、育ち学ぶ施設の情報について、保護者や区民に伝え、お互いに力を合わせて育ち学ぶ施設を運営するように努めます。
(こどもの権利が守られていない状態からの回復)
第12条 区や保護者、区民、育ち学ぶ施設の関係者は、お互いに力を合わせてこどもに差別や虐待、いじめその他の権利が守られていない状態があれば、力を合わせて早く権利が守られた状態へ回復できるようにするための支援に努めます。
2 区は、こどもの思いを受け止め、こどもの不安や悩みを解消できるよう相談に応じ、こどもが安心して育つことができる環境づくりに努めます。
(委任)
第13条 この条例に定めるもののほか必要なことは、区長が別に定めます。
附 則
この条例は、令和7年4月1日から施行します。