○江東区小規模給水施設の衛生管理に係わる指導要領

昭和60年5月24日

江保管発第65号

第1 趣旨

この要領は、「江東区小規模給水施設の衛生管理指導要綱」(以下「要綱」という。)第5条の規定に基づき要綱の運用に関して必要な事項を定めるものである。

第2 基本方針について

この要綱に基づく保健所長の業務は、地域保健法第6条を根拠として行われるが、保健所長の管理者に対する指導は法的な強制力を有するものでなく管理者の協力のもとに行うものである。

第3 平常時の保健所長の業務

1 実態の把握について

水道事業者から送付される受水槽等設置状況調査票等によるほか、必要に応じて現場調査を行い実態の把握に努めるものとする。調査項目は、別紙「給水設備の概要と実態調査票」のとおりとする。

2 管理者に対する指導について

管理者が第5及び第6に定める基準に従ってその施設を管理するよう指導すること。

3 衛生教育について

管理者に対する講習会の開催、パンフレットの配布、区報等を利用して給水施設の衛生管理について正しい知識の普及を図ること。

第4 汚染事故発生時の保健所長の業務

1 体制の整備について

保健所長は、検査機材、採水器、採水ビン、ライト、巻尺等を整備しておくこと。

2 情報の収集について

情報の受理は、別紙「事故発生処理票」によること。

また、汚染調査、代替水の確保等に水道事業者の協力を求めなければならないことがあるので、必要に応じて連絡しておくこと。

3 現場では、汚染の有無を確認するため、給水栓その他必要な場所において次の項目について検査を行う。

(1) 外観(色、濁り、異物、生物及び浮遊物等)

(2) 臭い、味

(3) 残留塩素

(4) pH

(5) その他

4 代替水の確保について

保健所長は、管理者が給水停止又は使用制限等の措置をとった場合は、次により代替水を確保するよう指導すること。

(1) 汚染事故が発生した建物又はその付近の水道事業者から直接給水されている給水栓を利用する。

(2) 建物又はその付近に給水栓がない場合は、水道事業者に臨時給水栓の設置又は応急給水を依頼する。この場合、所要の経費は依頼した者が負担することとなる。

5 汚染原因の調査及び除去について

汚染の原因、経路及び範囲を調査し、それが判明したときは、速やかに復旧のために必要な措置を行って汚染原因を除去し、槽内の清掃等を行うよう管理者を指導すること。

清掃については、別紙「事故発生時における措置」による。

6 復旧後の使用開始について

施設復旧後給水を開始するにあたっては、あらかじめ水質検査を行い安全を確認するよう指導すること。

この場合の水質検査は、次の項目について必ず行い、他の項目は汚染の状況等に応じて必要なものについて行うこと。

(1) 硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素

(2) 塩素イオン

(3) 有機物等(過マンガン酸カリウム消費量)

(4) 一般細菌

(5) 大腸菌群

(6) pH

(7) 臭気

(8) 色度

(9) 濁度

(10) 味

(11) 残留塩素

第5 施設の維持管理基準

1 末端給水栓における水の色、濁り、臭い、味等についての点検は毎日1回行い、残留塩素の測定は7日に1回行うこと。

2 施設の点検は、月に1回実施する。ただし、その貯水槽の構造が六面管理が可能なものであって、かつ、他から汚染の恐れがない場所に設置されている等、飲料水の安全確保に支障がないと認められる施設の場合は、点検の頻度を3月に1回まで減じてもよい。点検の方法は、別紙の「設備のチェックポイント」を参考として行う。

3 点検の結果異常があれば、設備の取り替え、補修、清掃等を行う。

4 管の損傷、さび及び水もれについては、目視のほか残留塩素濃度又は給水量の推移等を参考にして点検し、異常があれば必要な補修を行う。

5 逆流及び吸入を防ぐとともに衛生器具の吐水口空間を保つこと。吐水口空間が適正に保たれない場合は、バキュームブレーカーを取り付け、適正に作動しているか否かを点検する。

6 定期に行う貯水槽の清掃については、貯水槽清掃の登録業者(建築物における衛生的環境の確保に関する法律第12条の2により登録されたものをいう。)が実施することが望ましい。方法については、別紙の「貯水槽清掃」による。

7 給水栓における水に含まれる遊離残留塩素は0.1mg/l(結合残留塩素の場合は0.4mg/l)以上を保持する。ただし、供給する水が病原微生物に汚染されたことを疑わせるような生物若しくは物質を多量に含むおそれのある場合の給水栓における水の遊離残留塩素は0.2mg/l(結合残留塩素の場合は1.5mg/l)以上とする。

8 長期間使用を停止した水槽を使用するときは、槽内を点検し、必要に応じて槽内の水の入れ換え等を行い、残留塩素を測定し安全を確認してから給水する。

9 定期に行う残留塩素の測定、並びに槽の清掃後等に行う水質検査に関しては、採水の日時、場所、検査結果(又は、測定結果)を記録し、保管しておくことが望ましい。

10 施設の図面を保管しておくことが望ましい。

第6 施設の構造設備基準

建築基準法施行令第129条の2及び建設省告示(昭和57年第1674号)に適合させるように努めるものとし、とくに次の事項に留意する。

1 受水槽

(1) 受水槽は、点検、清掃、修理が容易かつ常時人の出入りをしない場所に設置する。屋外に設ける場合はフェンス等で囲み、関係者以外立ち入ることができないようにする。

(2) 受水槽は床置型とし、天井、底及び周壁は外部から点検できるような十分なスペースを確保する。

(3) 建築物の最下階で床下式、又は屋外にあって地盤面下の地下式、あるいは建築躯体を利用したもので、汚水槽等衛生上有害なものの貯留又は処理に供する施設までの水平距離が5m未満である場合は、これらの槽からの汚水等の侵入防止のために必要な措置を講ずる。

(4) 受水槽の天井、底及び周壁は、建物の他の部分と兼用しない。

(5) 受水槽内部は、給水管以外の管は貫通させない。

(6) 受水槽室が完全排水できない構造の場合は、受水槽に満水時の警報装置を設ける。

(7) 受水槽は、鉄筋コンクリート、鋼板、強化樹脂、その他堅固でかつ水質に悪影響を与えない材料を用い、完全な水密性を保つ構造とする。

(8) マンホールは、内径60cm以上の鍵付防水型とし各槽ごとに設ける。また、マンホール面は周囲の床面から10cm以上高くする。

(9) オーバーフロー管及び通気管は十分機能するものであり、昆虫等が入らない構造とする。

(10) 受水槽への給水管には、吐水口空間を設ける。また、オーバーフロー管、水抜管には排水口空間を設ける。

(11) 受水槽の受水口と揚水口は対称位置に設置する。これが困難な場合は迂回壁等を設けて滞留防止の措置を施す。

(12) 受水槽の容量は、1日の使用量の4/10~6/10を標準とし、施設の利用状況に応じ、槽を2槽以上設けることが望ましい。

(13) スラブ上部には、ボイラー、ポンプ、機械類、給油管、排水管等を直接設置しない。

(14) 給水管、揚水管、電極棒等が受水槽の上部スラブ面を貫通して配管若しくは設備されている場合は、スラブ貫通部分に汚水等の侵入を防ぐための防水措置を施す。

(15) 受水槽は、周囲にゴミや汚物の置場がなく、涌水や溜水に汚染されるおそれのない場所に設置する。

2 高置水槽

(1) 水槽室又は塔屋等の室内に設ける場合は、天井、床及び周壁との間は外部から点検できるように十分なスペースを確保する。

(2) 建物の屋上等に設ける場合は、点検、清掃、修理が容易で、かつ安全にできるようにする。

(3) 高置水槽の容量は、1日の使用量の1/10を標準とする。

(4) 高置水槽に用いる材料は、第6・1(7)に準ずる。

(5) マンホール、オーバーフロー管、通気管は、第6・1(9)及び(10)に準ずる。

3 給水設備

(1) 給水設備は、当該給水設備以外の管及び設備と直接連結させない。

(2) 給水管は、汚染された液体や物質の中を貫通させない。また、その直下には埋設しない。

(3) 給水管は、水質に悪影響を与えないものを使用する。

(4) 給水設備は、水撃作用の生じるものを使用しない。また、水撃作用の生じるおそれのある場合は、その防止装置を施す。

(5) 給水管は、他の配管と明瞭に識別できる措置を施す。

(6) 給水系統には、逆流、逆サイホン作用を生じさせないような設備をし、逆サイホン作用が生じるおそれのある器具、装置には、適切な防止装置を設ける。

事故発生時における措置

汚染個所

汚染物質

除去方法

受水槽

汚水等(雑排水)、油、殺虫剤、重金属

槽内を消毒し①、排水した後洗浄し、さらに排水→注水→消毒②→使用

受水槽

高置水槽

虫・ネズミ等

槽内の汚染物質を取り除き消毒①→排水→洗浄→排水→注水→消毒②→使用

給水管

(赤さび)

軽度の場合は赤さびが消失するまで放水してから使用すること。

管が老朽化している場合は取り替えること。

亜鉛(白濁)

亜鉛が溶出しなくなるまでの期間使用する際には、しばらく放水してから使用すること。

上記以外の汚染物質の場合は、上記方法に準じて行うこと。

(備考)

汚染受水槽水の処理について

A 消毒薬品は次亜塩素酸ソーダ溶液(6%)が良い。

B 消毒法(上記Aの薬品を使用した場合)

a 消毒①の際の薬品使用量は、受水槽の水量10m3に対して薬品を700mlを投入する。

b 消毒②の場合は、給水栓を開けて約5分放流した後、末端の給水栓の水に塩素臭がなければ、水量10m3に対して約200ml投入してから使用する。残留塩素(遊離)として0.4mg/l以上あった方が安全である。

この要領は、昭和60年6月1日から施行する。

この規程は、平成7年9月1日から施行する。

この規程は、平成11年4月1日から施行する。

別紙「事故発生時における措置」

 略

別紙「設備のチェックポイント」

 略

別紙「貯水槽清掃」

貯水槽掃除

貯水槽掃除の場合の基本的な実施要領及び注意事項について例示してみる。

貯水槽の位置、構造、用途などによってこの基本型を衛生上・安全上支障ない範囲で変更して作業が行われることが望ましい。

(1) 掃除の手順(受水槽)

貯水槽の掃除の順序は受水槽を必ず先に行い、次いで高置水槽を行う。(高置水槽の掃除は受水槽に準ずる)

ア 給水元栓(バルブ)を閉止する。

イ 捨て水を最少限にする対策をとる。

(ア) 高置水槽へ揚水すると同時に揚水ポンプの性能チェックを行う。

(イ) 受水槽容量が大きい場合、使用量を考慮し、前もって元栓を閉止する。この場合防災上に支障のないよう十分注意する。

(ウ) 消火設備の作動試験に利用する。

ウ 既設揚水ポンプを手動に切り替え、手持排水ポンプと併用し掃除用水を残し、一定の水位まで速やかに排水する。(床置式受水槽の場合はドレン弁を開き水を抜く。この際汚でいを排水管に流し込まないよう注意すること。)

排水に際して、排水系統、排水容量を確認し、建物内の洪水現象を起さぬよう注意する。

エ 照明及び槽内換気

作業者の安全確保のため、照明器具(防水・防爆型)及び換気ファンを取りつける。

オ 槽内の掃除

(ア) 入槽後、ただちに槽内の点検を行う。

(点検項目)キ裂、給水管以外の配管、給水器具、沈殿物や沈渣の状況、発錆状況等。

(イ) 掃除前の状態を写真撮影に収める。

(ウ) 槽内残水を利用し、デッキブラシその他の掃除用具(必要に応じ高圧洗浄機)を用いて、槽内全体を清掃する。同時に接続管、弁、機器類細部については特に入念に行う。

掃除の際、貯水槽内壁に損傷を与えぬよう注意する。塗装等の防錆処理(水質に悪影響を及ぼさない方法)を行う。又、修理箇所の点検を行い、必要あらば速やかに施工する。

(エ) 槽内付着物、沈殿物を除去後、洗浄汚水を排水し、再び清水を用いて仕上の掃除を行った後、洗浄汚水を完全排水し清潔なウエス等できれいにふきとる。

(オ) 必要以外の機器を撤去し、掃除後の写真を撮る。

カ 消毒

(ア) 槽内掃除終了後、次亜塩素酸ナトリウム溶液(濃度50~100PPm)を用いて消毒する。消毒の方法は、必ず噴霧器(高圧洗浄機を利用しても可)で噴霧する。

なお、ウエス、ブラシなどで消毒薬を塗布したり、バケツ等の容器に入れ浴びせかける方法は、消毒効果が低く作業効率も低下するので採用せぬこと。

(イ) 噴霧消毒後30分そのまま放置してから清水を用いて水洗いをする。

この操作を2~3回繰り返す。

(ウ) 最終消毒後は、24時間放置し貯水槽に注水するのが理想的であるが、現実問題としては困難なので必ず最終消毒後最低30分以上は放置して注水する。

(エ) 最終消毒後は、槽内から機具類を撤去し、置き忘れがないか確認し、以後は絶対に入槽することを禁ずる。

画像

キ 掃除後の点検調整

(ア) 槽を満水復帰させ、漏水の有無を調べる。

注水する際、断水させた場合に、水道引込管内及び給水管からのもらいさびやゴミが、混入せぬよう注意すること。

(イ) 各設備機器類の作動・調整を行う。

(ウ) 貯水槽周辺の掃除及び異物、昆虫類の侵入防止措置の点検を行う。

(2) 措置等

点検・作業中において問題箇所(不良・不備・汚染)を発見した時は速やかに担当部所へ連絡し、適切な措置を講ずる。

(3) 水質検査

貯水槽の掃除完了後、槽に満水復帰させたならば残留塩素量の測定と水質検査を槽内及び十分に放水した給水栓末端にて行う。

・ 残留塩素(遊離)…0.2ppm以上

(結合)…1.5 〃

・ 濁度…2度以下

・ 色度…5度以下

・ 水質検査…ビル管登録業者等の検査機関へ依頼する。

江東区小規模給水施設の衛生管理に係わる指導要領

昭和60年5月24日 江保管発第65号

(平成11年4月1日施行)

体系情報
第2編 生活情報/第7章 保健・衛生/第2節 生活衛生
沿革情報
昭和60年5月24日 江保管発第65号
平成7年8月4日 江環健発第427号
平成11年4月1日 江保健発第32号