江東区 UD TRY!5  ユニバーサル・デザイン・トライ!5 体験しながら感じる編 全16ページ 1ページ目(表紙) 「UD(ユニバーサルデザイン)」という言葉をはじめて聞く人に読んでもらいたい ユニバーサルデザインのまちづくり 楽しく体験しながら感じよう 1ページ画像1 横断幕に「ユニバーサルデザインのまちづくり 楽しく体験しながら感じよう」と書かれてあり、それを見上げている赤い帽子を被った人。横断幕の奥には、なにやら活動をしている人々がいるイラスト。 1ページ画像2 江東区のマーク ハートマークの中にSPORS&SUPPORTSの文字がデザイン。ハートマークの下にKOTOcity in TOKYO スポーツと人情が熱いまち江東区。 2ページ3ページ目 ユニバーサルデザイン(UD※1)を「体験」して「感じて」みよう! UDまちづくり※2とは、すべての人にとって使いやすいまちをつくること。 江東区では、区民と区が一緒になって、UDまちづくりに取り組んでいます。 おや? 今日は「UD体験イベント」があるようです。 ※1 UD ユニバーサルデザインは英語の頭文字でUDと表現しています。 ※2 ユニバーサルデザイン(UD)まちづくり 江東区では、「年齢・性別・国籍・能力などの違いを尊重しつつ、誰もが使いやすく安全で安心な環境をつくるため、住民と事業者および自治体が協働で進めるまちづくり」と定義しています。 3ページ画像1 横断幕をくぐって内側に入った赤い帽子のが、その先に4つのコーナー「しゃべり場」「手話で絵本の読み聞かせ」「音声ガイドってなに?」「みんなでボッチャ」を嬉しそうにみている様子が描かれたイラスト。 UDまちづくりの基本はすべての人の「人権と尊厳」を守ること。このような観点から、区民と区がいっしょにUDまちづくりを考えるワークショップ(少人数のグループ活動を原則として、協働作業を通して合意形成をはかる会議や学習の方法)を実施しています。 4ページ5ページ目 体験1 しゃべり場 4ページ5ページ画像1 3人の人が話をしているアイコン 4ページ5ページ画像2 体験1の担当者と赤い帽子の人が話しているイラスト ●体験1の担当者の吹き出し 「しゃべり場」へようこそ。 ここでは、日常生活のあるシーンをテーマに、自由におしゃべりをします。 今日のテーマは「コンビニエンスストアで買い物」です。 ●赤い帽子の人の「心の声」の吹き出し えっ、おしゃべり? 買い物?UDって段差をなくしたり、障害者が使えるものをつくることなんじゃないの? 4ページ5ページ画像3 担当者がイスに座っているイラスト ●体験1の担当者の吹き出し コンビニで買い物をする時、なぜコンビニを選ぶのかや、困っていることはないかなどを自由に話してください。今、6人の参加者が円になって座っています。私の右隣の人から進めましょう。 ●赤い帽子の人の「心の声」の吹き出し そんなこと、いちいち考えて買い物してないよ。何を話せばいいの? みんなは何を話すの? 4ページ5ページ画像4 1人目 60才代くらいの人のイラスト 私はセルフレジの操作が苦手で時間がかかってしまいます。後ろに待っている人がいるとドキドキします。 ●赤い帽子の人の「心の声」の吹き出し そうなんだ…。僕は便利に使っているけれど、苦手な人がいるんだな。 4ページ5ページ画像5 2人目 車いすを使っている人のイラスト コンビニの通路は狭いことが多いので、スーパーマーケットの方が買い物しやすいな。また、スーパーは店員さんが多いので、モノを取ってもらう時にも声かけがしやすいです。 4ページ5ページ画像6 3人目 白杖(はくじょう)※を使っている人のイラスト 私は、店内がコンパクトなコンビニの方が、商品が探しやすいです。でも、おにぎりの具は当てずっぽうで選ぶしかない時もあるから、食べてみるまでわからない、なんてこともあります。 ※視覚障害者がまわりの環境を確認したり、自分が視覚障害者であることをまわりの人に伝えたりする目的で使う杖。目の見えない全盲の人だけでなく、見えにくい弱視の人も使います。 ●赤い帽子の人の「心の声」の吹き出し(2人目、3人目の人の発言に対して) そうか、いろんな人がいるんだね。          4ページ5ページ画像7 4人目 10代後半の主人公のイラスト ●赤い帽子の人の吹き出し え〜っと、ぼくは、好きなコンビニスイーツがあり、つい同じコンビニを選んでしまいます。 (しまった、何か恥ずかしいこと言っちゃったかな?)          4ページ5ページ画像8 1人目の60才代くらいの人のイラスト そうそう、わかる。私は「おでん」で同じコンビニを選んじゃう! ●赤い帽子の人の「心の声」の吹き出し よかった、こんな話で盛り上がるんだ。 4ページ5ページ画像8 5人目 ベビーカーを押している人のイラスト 小さい子どもと一緒だと、ベビーカーで通路を塞いでしまったり支払いに時間がかかったりするので、店内に人が多い時はためらってしまいます。          4ページ5ページ画像9 2人目の車いすを使っている人のイラスト 混んでる時は遠慮してしまうよね。でも、私は入れるお店の選択肢が少ないので混んでいても入るしかないですね。 ●赤い帽子の人の「心の声」の吹き出し(5人目、2人目の人の発言に対して) 混んでいる時に感じることもいろいろなんだね。          4ページ5ページ画像10 6人目 手話で話す人のイラスト 店員さんがマスクをしているとコミュニケーションに苦労します。 ●赤い帽子の人の「心の声」の吹き出し えっ!コンビニでコミュニケーション? ※耳の聞こえない人の中には、相手の口の形を見て、話の内容を理解する人がいます。          あなたならどんな話をしますか?(空欄あり)                   6ページ目 UDポイント1 いろいろな人の「やり方」を知ろう コンビニでの買い物ひとつとってみても、いろいろなやり方があること、人によって使いやすいお店やしくみがあることがわかります。どんなことでも、「それぞれのやり方」がきっとあるのです。先入観をもたずに同じテーマで話をすることは、気づきの宝庫かもしれません。 6ページ画像1 赤い帽子の人が驚いている表情のイラスト ●赤い帽子の人の「心の声」の吹き出し コンビニを何気なく使っていたけど、いろいろな話があってびっくりしたな。 この体験は、江東区UDまちづくりワークショップで取り組みました。 参加者からひとこと! 「コンビニで買い物」といった身近なテーマでおしゃべりをしただけなのに、一人ひとりの感じ方が多様で、工夫もあり、選ぶ理由も様々で驚きました。 私も最初は、UDというのは、何か特別なことをすることだと感じていました。でも数年前にこのワークショップに参加するようになってから、何も特別なことではなくて「相手の立場を考えて、自分の身近なところで、できることをすること」と気づくことができました。 ゲスト紹介 ワークショップでこの体験を指導してくれたのは、「日本ユニバーサルレジャー協会」の長田麻希(ながた まき)さんです。 長田さんからは、自身の障害(網膜色素変性症)を周囲の人に話せるようになった経験談をもとに、互いの違いを認めあった上で「一緒に何ができるか」を考えること、そのためにはレジャーなどの遊びを通じて、構えることなく話せる場をつくることが大切というお話をいただきました。 6ページ画像2 ゲストの長田麻希さんの顔写真 6ページ画像3,4,5 ワークショップ風景の写真 7ページ目 目的は同じ、やり方が違う 江東区のUDまちづくりでは《目的は同じ、やり方が違う》という考え方を重視しています。「買い物をする、食事に行く」といった日常の場面でも、お店の通路が狭くて車いすを使っている人は入ることはできなかったり、見えない人は一人で買い物をしづらかったり、聞こえない人は店員さんとのやりとりで苦労したりなど、自由にお店を使えない人がたくさんいます。 例えば、目的は「買い物をする」であっても、人によって《いろいろなやり方》があります。しかし、今のまちでは《いろいろなやり方》に対応できていないことがたくさんあるのです。 UDまちづくりは《同じ目的を達成する》ため《いろいろなやり方》に対応できるまちになるように、環境を整備したり、お互いに必要な支援をしたりする取り組みです。 7ページ画像1 「目的は同じやり方が違う」を図式化(江東区 UD TRY! 4 2021.3 より一部改変) 1 同じ目的」を多様な人が達成したいと思っている ↓ 2 人によって「やり方」に違いがある ↓ 3 決まったやり方しかないとできない人がいる ↓ 4 「誰もが目的を達成」するために複数のやり方を用意したりやり方を工夫する 1 「目的」 例)行きたい飲食店で食べる 「登場人物」 どのお店も選択できる人(肩掛けカバンを持った人のイラスト)        入りたかったお店の入口に段差があった車いす使用者(車いすに乗った人のイラスト) 2 「その人のやり方」 どのお店も選択できる人|歩いて店に入り、テーブルに座って食べる 車いすに乗った人|車いすで店に入り、車いすに座ったままで食べる 3 「社会や環境の現状」 どのお店も選択できる人|店を自由に選べる 車いすに乗った人|入れる店が限られる 4 「社会や環境に変わってほしいこと」 どのお店も選択できる人|不便を感じない、今のままで満足 車いすに乗った人|まちの整備 段差解消、店内通路を拡幅、テーブルやイスを固定しない 人の対応 移動を手伝う 「結果」 どのお店も選択できる人、車いすに乗った人|目的達成! 8ページ目 体験2 音声ガイドってなに? 8ページ画像1 スクリーンと音声ガイドを表現したアイコン 8ページ画像2 体験2の担当者と赤い帽子の人が会話をしているイラスト ●赤い帽子の人の「心の声」の吹き出し 次は何だろう。 ●体験2の担当者の吹き出し こんにちは。ここでは、音声ガイドをします。映画を言葉で表現してみましょう。これから同じ映像を3回観てもらいます。 1回目(音のみ) 8ページ画像3 イスに座った担当者の背面に黒いスクリーンがあり、その向かいに赤い帽子の人と白杖を持った人が座っているイラスト ●体験2の担当者の吹き出し 最初は「音」だけで、画面は真っ暗です。 ●赤い帽子の人の吹き出し 乗り物の音がしました。バスか電車に乗っているのかな? ●白杖を持った人の吹き出し 何か食べているみたいですね。 2回目(音 プラス 音声ガイド) 8ページ画像4 担当者が黒いスクリーンの前に立ち何か話しており、その向かいには赤い帽子の人と白杖を持った人が座っているイラスト ●体験2の担当者の吹き出し 続いて同じシーンの2回目です。今度は音声ガイドをつけます。 音声ガイド 主人公のA子はバスに乗りました。移動する車窓に流れる景色を興味深そうに眺めているA子の横顔。屋台 で、丸い形をした水餃子のようなものを食べているA子。満面の笑顔です。 ●赤い帽子の人の吹き出し バスに乗っているんですね。どんな景色を見ているかが気になりました。 ●白杖を持った人の吹き出し 食べ物がおいしそうに感じました。 3回目(音 プラス 音声ガイド プラス 映像) 8ページ画像5 担当者が映像が映し出されたスクリーンの前に立ち何か話しており、その向かいには赤い帽子の人と白杖を持った人が座っているイラスト ●体験2の担当者の吹き出し 最後に、映像を音声ガイド付きで観てください。 ●赤い帽子の人の吹き出し 食事はイメージに近かったです。 ●白杖を持った人の吹き出し 食べてみたいですね! 9ページ目 UDポイント2 相手の立場で「やり方の違い」を理解しよう いろいろな人が映像を楽しんでいます。でも、見えない人は映像に流れる音だけでは十分に内容が理解できないことがあります。また、聞こえない人は目で見る情報がなければ言葉のやりとりはわかりません。 音声ガイドや字幕、手話をつけること等は、「映画を楽しむ」という同じ目的を達成するための「やり方の違い」に対応したものです。映像の音でどんな情報が伝わり、何が足りないのか、相手の立場になって体験してみることが大切なのです。 9ページ画像1 赤い帽子の人が笑顔のイラスト ●赤い帽子の人の「心の声」の吹き出し 音だけでもわかることがあるけれど、説明されることでもっとわかることもあるんだね!。 この体験は、江東区UDまちづくりワークショップで取り組みました。 参加者からひとこと! 私は目が見えないのですが、よく音声ガイド付きの映画を楽しみます。私は主人公の気持ちになったり、主人公とともに映画の世界に入っていくような見方をしています。その助けになるような状況を説明してくれるガイドをしてもらえると、もっと楽しめます。 見えない人は、言葉のほかにも、匂いや触覚等の感覚を使っていろいろなものを感じています。そのような情報があると、さらに豊かな世界をみんなと共有できます。最近は、スマホ用のアプリで、音声ガイドのほか、字幕や手話が表示されるものもありますので、ぜひ使ってみてください。 9ページ画像2 参加者の中山利恵子さんの顔写真 ゲスト紹介  この体験を指導してくれたのは、バリアフリー活弁士の檀鼓太郎(だんこたろう)さんです。 音声ガイドの基本は、登場人物の顔と名前を覚え、その上で誰が話や行動をしているのかを伝えることです。また、どんな場所なのか(地名や特徴ある風景)を伝えることにも気をつけているそうです。 音声ガイドはやり方によっては、セリフを遮ってしまい、かえってわかりにくくなることもあります。言葉の選び方、言葉を入れるタイミング等を考えることが大切と教えていただきました。 9ページ画像3 ゲストの檀 鼓太郎さんの顔写真 9ページ画像4,5,6 ワークショップ風景の写真 10ページ目 体験3 手話で絵本の読み聞かせ 10ページ画像1 開いた絵本の前に「アイラブユー」を表す手話が描かれたアイコン 10ページ画像2 赤い帽子の人が次のコーナーに向かっているイラスト ●赤い帽子の人の「心の声」の吹き出し 次は何だろう。だんだんワクワクしてきたぞ。 10ページ画像3 体験3の担当者と赤い帽子の人が話しているイラスト ●体験3の担当者の吹き出し ここでは、手話で絵本の読み聞かせをします。 手話ができなくても大丈夫です。絵本の世界を身体で表現してみましょう。できれば、一つでも手話を覚えてもらえたらうれしいです。声を出さなくても子どもが夢中になって絵本の世界に入れるような表現を考えてください。 ●赤い帽子の人の「心の声」の吹き出し え? 手話、知らないよ。 10ページ画像4 3人の参加者がイスに座って円を囲んでいるイラスト。赤い帽子の人や車いす使用者もいる。 ●指を天井に向けてさしている参加者の吹き出し 夜明け前の静かな風景。シーンとした感じと、青をうまく表現したいな。こんな感じはどう? ●赤い帽子の人の「心の声」の吹き出し 空の色で「青」を伝えたんだ。うまいな。 ●手のひらをパタパタして顔を仰いでいる車いす使用者の吹き出し ギラギラとした暑さをどうしたら感じてもらえるかな。うちわで仰ぐことで表現できるかな。 ●赤い帽子の人の「心の声」の吹き出し 表情も暑そう! 10ページ画像5 車いす使用者と赤い帽子の人が向かい合っているイラスト ●赤い帽子の人の「心の声」の吹き出し 僕の番だ、緊張するな。だんだん膨らんで、爆発する絵だ。手の動きのスピードを変えることで、うまく伝わらないかな。 ●赤い帽子の人の吹き出し こんな感じはどうでしょうか? ●手を叩いている車いす使用者の吹き出し 面白い。よく伝わってるよ。 11ページ目 UDポイント3 多様な文化を理解しよう 絵本の読み聞かせは、「絵本」の世界に入ることで、言葉や表現の豊かさを子どもたちが体験するとても大切な時間です。 手話で話す聞こえない人は、この体験を手話で行います。手話は手の動き、顔の表情等で表現することで伝えあう「視覚言語」なのです。こうした「多様な文化に触れ、その理解を深めること」は、UDまちづくりではとても重要なことです。 11ページ画像1 赤い帽子の人が笑顔のイラスト ●赤い帽子の人の「心の声」の吹き出し 表現することに夢中になったけど、聞こえない子どもたちに伝わるかな。手話をもっと知りたくなってきたぞ。 この体験は、江東区UDまちづくりワークショップで取り組みました。 参加者からひとこと! 私はろう者で手話で話します。みなさんがとても豊かな表現をしていて、面白かったです。こうした機会を通して、手話に対する関心が高まるとうれしいです。 手話という言語や、聞こえない人の文化にもっと触れてもらい、互いへの理解が深まることを願っています。 11ページ画像2 参加者の小林とみ子さんの顔写真 ゲスト紹介 この体験を指導してくれたのは、「NPO法人しゅわえもん」の野武ス(のざき まこと)さんです。 野浮ウんは、自身が子どもの頃、絵本を見ても「手話」と「文字」が結びつかなかったそうです。手話による絵本の読み聞かせは、子どもたちの中で「手話」と「文字」を結びつける、大切な経験をしてもらうための活動です。しゅわえもんでは、読み聞かせに加え、手話という言語を通じて子どもたちが多様な世界を知ることができる様々な活動に取り組んでいます。 11ページ画像3 ゲストの野武スさんの顔写真 11ページの画像4 ワークショップ風景より、表紙を表現する野崎さんの写真。 11ページの画像4のキャプション 表紙は絵本の世界に入る大事なページ(絵本「もこ もこもこ」作 谷川俊太郎 絵 元永定正 出版社 文研出版) 11ページの画像5 ワークショップ風景より、聴覚障害者に手話の表現のアドバイスを受け、天井を指差している参加者の写真。 11ページの画像5のキャプション 空を指して「青色」を伝える 11ページの画像6 ワークショップ風景より、表現する車いす使用者と、絵本を持つ参加者の写真。 11ページの画像6のキャプション 爆発して飛び散る様子を、最初はゆっくり最後は早くすることで表現 12ページ目 体験4 みんなでボッチャ 12ページ画像1 ボッチャのコートとボールが描かれたアイコン 12ページ画像2 体験4の担当者と赤い帽子の人が話しているイラスト ●体験4の担当者の吹き出し ここでは、ボッチャをします。ボッチャは個人競技と団体競技があります。今日は、チームをつくって団体戦をします。 ●赤い帽子の人の「心の声」の吹き出し あ、ボッチャだ。パラリンピックでやっていた。面白そうだ! 12ページ画像3 3人の参加者のイラスト。赤い帽子の人、手話で話す人、車いすを使用している人がいる。 ●赤い帽子の人の吹き出し こんにちは、はじめまして。 ●手話で話す人の吹き出し (手話で)よろしくお願いします。 ●車いす使用者の吹き出し よろしくお願いします。 12ページ画像4 体験4の担当者と3人の参加者のイラスト ●体験4の担当者の吹き出し さて、最初に「チーム名」と「リーダー」を決めてください。それから、応援する時や集中する時に使う 「かけ声」を決めてください。 ●赤い帽子の人の吹き出し じゃんけんで勝ったので、僕がリーダーですね。共通して赤いモノを身につけているから「チームレッド」にしませんか。かけ声は「れっど!」で。 ●手話で話す人の吹き出し 人差し指で唇の上をスライドさせるのが「赤」の手話。かけ声は、声と同時に唇に触れた後、ガッツポーズをしませんか? 12ページ画像5 3人の参加者がボッチャのコートでゲームをしているイラスト ●赤い帽子の人の吹き出し あ、さっそくチャンスだ!せーの「れっど!」。 ●車いす使用者の吹き出し よし! うまくいったぞ。これでチームレッドの勝ちだ! ●手話で話す人の吹き出し やった、やった。 ボッチャのルールについてはこちらをご覧ください 「かんたん!ボッチャガイド」 https://www.parasports.or.jp/about/referenceroom_data/competition-guide_10.pdf 13ページ目 UDポイント4 積極的なコミュニケーションが一体感をつくる ボッチャはルールがシンプルで、障害の有無にかかわらず競いあえるスポーツですが、とても奥が深い競技でもあります。 3人でチームを組んでも、各自の投球プレーの責任は1人で背負います。どんなに障害が重くても、コートの中では自己決定ができる(しなければならない)のです。だからこそ、声をかけあったり作戦を一緒に考え応援しあう、密接なコミュニケーションが不可欠です。 コミュニケーションをとりあうことで、競技中の集中力が高まり、投球のたびに共に喜んだりくやしがったりすることで、チームの一体感が増していくのです。 13ページ画像1 赤い帽子の人の笑顔のイラスト ●赤い帽子の人の「心の声」の吹き出し あっという間に仲良くなれて、勝っても負けても、楽しかったな! この体験は、江東区UDまちづくりワークショップで取り組みました。 参加者からひとこと! 以前からボッチャを知っていたものの体験したことはなく、今回、改めて知ることができました。楽しくて障害者の体力向上、可動域(体の動かせる範囲)を広げる1つのツールとしてとても良いのではないかと感じました。 また障害者に関わる関係者の研修等においても良い教材の1つになると感じました。 13ページ画像2 参加者の藤田裕大さんの顔写真 ゲスト紹介 この体験を指導してくれたのは、廣瀬ボッチャクラブの古尾谷香苗(ふるおやかなえ)さんです。日本代表チームのコンディショニングトレーナーで、多くの選手のサポートを行っている専門家です。 古尾谷さんにちょっとしたアドバイスをもらうだけで、多様な作戦があることがわかり、競技の奥行きがぐっと深まったように感じました。 「ここが勝負、という時に『かけ声』をかけあうかどうかで、本当に結果に違いが出るんですよ」と、チームプレーはコミュニケーションが大切であることを教えていただきました。 13ページ画像3 ゲストの古尾谷香苗さんの顔写真 13ページ画像4,5,6 ワークショップ風景の写真 14ページ15ページ目 体験を通して、UDまちづくりを考える 4つの体験のUDポイントを、「UDまちづくり」につなげて考えてみました。 体験1 「しゃべり場」:いろいろな人の「やり方」を知ろう ここでは、みんなそれぞれ《やり方に違いがある》ことを「感じる」体験をします。 《やり方の違いを感じる入口》をめざしています。 私たちの社会には、それぞれが個性や特徴を持っている、いろいろな人が暮らし ています。 しかしまちは、多数の人に共通する「やり方」にあわせてつくられているため、それ以外の少数の「やり方」の人はまちで行われている様々な活動に参加できないことがあります。 一つひとつのやり方の違いが小さいうちはそのことに気づきませんが、その違いの延長上に少し大きな違いが生まれます。例えば、車いすを使っている人は、「行きたいお店」ではなく「行けるお店」を選んでいる現実があります。 こうしたことの積み重ねが、時として差別のもとをつくっているかもしれません。 このような差別を生まないためには、それぞれの《やり方の違い》に意識的になることが必要です。 体験2 「音声ガイドってなに?」:相手の立場で「やり方の違い」を理解しよう ここでは、音声ガイドの体験と、そのポイントを相手の立場で考えます。 《やり方の違いを理解し、具体的な対応を体験してみること》をめざしています。 見ること、聞くことの両方で映像を観ている人は、音だけではその内容をうまくつかめません。これは視覚に障害のある人が常に体験していることです。 しかし、「障害の疑似体験」では、障害のある人の日々の感覚を理解することにはつながらず、逆に「かわいそう」とか「怖い」といった、障害に対する負の(ネガティブな)感情を生んでしまうことがあります。 視覚障害のある人が映像を楽しめるように、その人にあった「やり方」を工夫して、楽しさを分かちあいましょう。 体験3 「手話で絵本の読み聞かせ」:多様な文化を理解しよう ここでは、手話による絵本の読み聞かせにより、音声による読み聞かせとは違う世界が広がっていくことを体験します。 手話をはじめ、《多様な文化を理解し尊重すること》をめざしています。 手話は、独自の文法体系を持った視覚言語であり、ろう者にとって欠かせない情報伝達の手段です。2011年の障害者基本法改正で、手話が「言語」であることが位置づけられました。 ろう者には手話という「言語」を持った特有の「文化」があります。 そういった文化の違いを理解し、多様性を包容し共生する(インクルーシブな)社会を実現するためには、一人ひとりの人権と尊厳を尊重することが基本です。 UDまちづくりでは、こうした理解を促進するとともに、聞こえない人の《やり方の違い》に、社会としてどう対応できるかを考えます。 体験4 「みんなでボッチャ」:積極的なコミュニケーションが一体感をつくる ここでは、ボッチャを通じて、あっという間にコミュニケーションが深まることを体験します。 《立場の違う人とでもコミュニケーションでき、その楽しさを実感すること》をめざしています。 社会では、そこに暮らす一人ひとりが互いを理解しあうためのコミュニケーションが重要です。 「やり方の違う」人同士がコミュニケーションをとるきっかけとして、「ボッチャ」を取り上げました。ボッチャはパラリンピックで注目を集めた、誰でも楽しめる気軽さと奥深さをかね備えた競技です。 手話で話す人、手が不自由な人、目が見えない人、子ども、お年寄り等、メンバーはいろいろでも、競技という一つの目標があると、違いを超えて話しあい、協力することが、意外に簡単にできるのです。 街角で、買い物の場で、乗り物の中で、《やり方が違う》人と出会った時、ここでお伝えした4つの体験を思い出して、ちょっと言葉を交わしたり、必要があれば手を貸したりするなど、TRY!してみてください。 誰もが暮らしやすいまちをめざして、みんなでUDまちづくりを進めていきましょう。 16ページ目 UDまちづくりについてのキーワード 多様性とUDまちづくり UDまちづくりは、「誰も」が対象です。にもかかわらず、「障害者」のためのまちづくりと誤解されてきた面があります。 これまで環境や社会的制度の整備の遅れによって、いわゆる「障害者」が不便を強いられたり、差別的な対応をされてきた経緯があり、その解消が重要な課題となってきたことも事実です。 しかし、「障害」と認識されなくても、「道に迷いやすい」「体が疲れやすい」等、誰もがどこかで困ったり、生きにくさを感じることがあるのではないでしょうか。こうしたことも含めて、多様性はすべての人(あなたも)が抱えうる「グラデーション(色や明るさが連続的に変化する様子)のようにある」ものということができます。 現実の社会では、性別、国籍、年齢、能力の違い等によって、様々なところで不平等が生じています。これらの解消もUDまちづくりがめざすことなのです。 《医学モデル》と《社会モデル》 今まで「障害」は主に本人の側に要因があると捉えられていたのですが、現在では社会の側に要因があるという捉え方に変わってきています。「障害」とは《本人の側の要因》と《社会の側の要因》の相互作用によって生じます。つまり、「障害」をなくすためには、《社会の側》も変わらなければならないのです。 《医学モデル》 たとえば、車いす使用者が段差のあるお店に入れないのは、足が不自由で車いすを使っているからだと考えがちです。つまり、本人の側に要因があるという考え方です。この考え方では、障害者は弱い立場にあり、助けられる存在です。 《社会モデル》 入口に段差がある店に入れないのは、環境側に問題があるから、という考え方もできます。入口にスロープがあったり、支援があれば、たとえ車いすを使っていても、買い物ができます。この考え方では、環境こそが「障害」なのです。 障害者の権利に関する条約(略称:障害者権利条約) 「医学モデル」と「社会モデル」の捉え方の違いは、「障害者の権利に関する条約」にも明記されています。この条約は、障害者の人権及び基本的自由の享有を確保し,障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的としたもので、2006年に国連総会において採択されました。日本は「障害者基本法」の改正や「障害を理由とした差別の解消の推進に関する法律(差別解消法)」等、関連する国内法を整備し、2014年にこれを批准しました。 合理的配慮 UDまちづくりで重要なのは、「複数のやり方を用意すること/やり方を工夫すること」です。たとえば、車いす使用者が買い物をしたいのに店の入口に段差があって入れない場合、その目的が達成できません。この時、買い物ができる人とできない人がいる=「差別」の状態が生じています。それを解消するために必要なことが「合理的配慮」です。 その人が求める時には、それが過重な負担でない限り、車いすが入れるように手伝ったり、入れなければ商品を持ってきたりして、買い物ができるようにしなければなりません。ほかにも、見えない人に商品を説明したり、聞こえない人に筆談をする、といった対応をすること等も「合理的配慮」といえます。障害者権利条約や障害者差別解消法では、差別的な行為をすることだけではなく、合理的配慮の提供がなされないことも「差別」であるとしています。 平等と尊厳 なぜ、差別がいけないのか。それは差別された人の「尊厳」を傷つけ、「人権」を侵害するからです。これらの考え方の基本にあるのは、すべての人の平等と尊厳を守るという考え方です。 誰もが自分のやり方で、やりたいことが達成できるようなまちをめざすこと、それがUDまちづくりなのです。 奥付 江東区 UD TRY! 5  ユニバーサルデザインのまちづくり 楽しく体験しながら感じよう 編集・発行 江東区都市整備部まちづくり推進課        〒135-8383 東京都江東区東陽四丁目11-28 電話03-3647-9781 FAX03-3647-9009 作成・編集協力 場所づくり研究所プレイス         〒156-0044 東京都世田谷区赤堤3-3-18 電話03-3324-0365 FAX03-3324-0376 アドバイザー 川内美彦(アクセシビリティ研究所主宰/東洋大学人間科学総合研究所客員研究員)  デザイナー カタヤナギユウイチ  イラスト 絹村亜佐子 UDを「体験」して「感じて」みよう! 4つの体験レポート(江東区公式youtube) https://www.youtube.com/watch?v=_A4KgRQd8ro 音声ガイド付↓ https://www.youtube.com/watch?v=an5RdWODrmE 2023年3月発行 印刷物登録番号(4)97号