江東区 UD TRY!4  ユニバーサルデザイントライ!4 やり方が違う編 全12ページ 1ページ 「UD(ユニバーサルデザイン)」という言葉をはじめて聞く人に読んでもらいたい やり方が違うを考える ユニバーサルデザインのまちづくり 1ページイラスト1 商店が続く道を背景に、8人の様々な立場の人が集合している様子。 1ページイラスト2 江東区のマーク ハートマークの中にSPORS&SUPPORTSの文字がデザイン。ハートマークの下にKOTOcity in TOKYO スポーツと人情が熱いまち江東区。 2ページ ユニバーサルデザイン(UD※1)まちづくり※2って何だろう →誰もが使いやすいまちをつくること 「誰も」ってだれのこと? →まちにはいろいろな人が暮らしています。「誰も」は、そのすべての人をさしています。  あなたも「誰も」の中のひとりです ※9ページまで読んでくださいね 「使いやすい」ってどういうこと? →人には個性や特徴があり、「いろいろなやり方」があります。それぞれの人の「やり方」が尊重され、自分のやり方が選べること。そういうまちは「使いやすい」まちといえます。 ※1 UD ユニバーサルデザインは英語の頭文字でUDと表現しています。 ※2 ユニバーサルデザイン(UD)まちづくり 江東区では、「年齢・性別・国籍・能力などの違いを尊重しつつ、誰もが使いやすく安全で安心な環境をつくるため、住民と事業者および自治体が協働で進めるまちづくり」と定義しています。 3ページ 3ページ画像1 表紙に描かれていたまちの中に、様々な立場の人が行き交っている様子。 さあ、一緒にUDまちツアーに出かけよう! 江東区では多様なメンバーとワークショップを積み重ね、UDまちづくりについて考えてきました。いま、私たちが考えるUDまちづくりをみなさんにわかりやすく伝えたいと、この冊子をつくりました。 4ページ いろいろな仲間に出会えるUDまちツアー 4ページイラスト1 2人の人が会話をしている様子。 4ページイラスト1にあるセリフ          やあ、久しぶり。UDまちツアーに一緒に行かない?         いいね!          タイトル 信号を渡ろう 4ページイラスト2 2人が信号を渡ろうとしている様子。 4ページイラスト2にあるセリフ          肩掛けカバンを持っている人|あっ、信号が赤にかわる!         足にサポーターをしている人|次の青信号を待つよ。実は、サッカーで足を痛めて、早く歩けないんだ         コメント|急いで渡れる人ばかりではないんだね ●いろいろな人 早く歩けない人は?ほかにたとえば 4ページイラスト3 松葉杖をつきながら歩いている人 4ページイラスト3のキャプション 松葉杖の人 4ページイラスト4 ベビーカーを押しながら歩いている人 4ページイラスト4のキャプション ベビーカーを押している人 ・高齢者 ・体力がない人 等 ●いろいろなやり方 ・急ぎ足で渡る人もいますが、次の青信号まで待つ人もいます。 4ページイラスト5 ゆっくり歩いている人 4ページイラスト5のキャプション ゆっくり歩く人 4ページイラスト6 速く歩いている人 4ページイラスト6のキャプション 速く歩く人 ●使いやすくするための工夫 ■まちの整備 1 青信号が延長される信号があります。 4ページ写真1 青を延長できる信号機のボタン 2 残り時間を知らせる表示のある信号があります。 4ページ写真2 残りの時間を知らせる表示のある信号機 ■人の対応 ・人それぞれのペースで行動していることを理解し、急かしたりしないことが大切です。 ・グループで歩く時は、ゆっくりペースの人が先頭を歩くと、一緒に歩きやすくなります。 これで、ゆっくり歩く人も安心だね! 5ページ タイトル 駅前の案内サインの前で 外国の人と会いました 5ページイラスト1 2人で歩いていると、案内板の前で困っている人(リュックを背負った人)に気がついた様子。 5ページイラスト1にあるセリフ         肩掛けカバンを持っている人|日本語がわからないのかな 5ページイラスト2 声をかけている風景 5ページイラスト2にあるセリフ                 肩掛けカバンを持っている人|やあ、外国の人なんだね         リュックを背負った外国人|コンニチハ ●いろいろな人 案内サインが使いにくい人は?ほかにたとえば ・文字を読むのが苦手な人 等 ●いろいろなやり方 ・「簡単な日本語」ならわかる人がいます。 ・「外国語」や「ルビ」があると読める人がいます。 ・人に聞く人もいます。 ●使いやすくするための工夫 ■まちの整備 ・「多言語」「ルビ付き」「やさしい日本語(参照コラム1)」等で表記された案内サインがあります。 5ページ写真1 案内サイン 5ページ写真1のキャプション 主要施設が4カ国語表記の案内サイン【江東区】 ■人の対応 ・「やさしい日本語」や、指さし・身ぶりを使って伝えます。 いろいろな方法で情報が得られるといいね 次ページへ続く コラム1 やさしい日本語 様々な国から、仕事や勉強のため等、いろいろな理由で日本に居住する外国人が増えています。中には日本語が十分に理解できない人もいて、生活に必要な行政からのお知らせや、緊急時の大切な情報が得られないこともあります。多言語対応は大切ですが、すべての言語に対応することは難しいので、日本語に不慣れな人でも理解しやすいように「やさしい日本語」を使った情報発信の取り組みも行われています。 日本語をわかりやすくする例 『在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン』(出入国在留管理庁/文化庁 2020.8)パンフレットより引用 ◎ 簡単な言葉を使う ◆例文 こちらに記入願います。 ◆書き換え例 この紙に書いてください。 ◎3つ以上のことを言うときは、箇条書きにする ◆文書き換え例 入会をご希望の方は、3つの申込み方法があります。 ●窓口での申込み ●ホームページでの申込み ●電話・FAXでの申込み 6ページ タイトル 次に、目が見えない人と会いました。東京スカイツリー?が見えた! 6ページイラスト1 3人が白杖を持っている人と出会った様子。 6ページイラスト2 正面にスカイツリーが見えている 6ページイラスト2のセリフ           肩掛けカバンを持っている人|心の声(あっ、スカイツリーだ! でも、見えない人がいるから言わない方がいいかな、、、)           足首サポーターをしている人|スカイツリーが見えた!           白杖を持った人|あらっ、どの方角? 6ページイラスト3 4人で話している様子 6ページイラスト3のセリフ           肩掛けカバンを持っている人|実は、伝えるか迷ったんだ、、、。           白杖を持った人|遠慮せずに伝えて。ほかに何が見えるの? ●いろいろな人 ビューポイントが見つけにくい人は?ほかにたとえば ・見えにくい人 等 視覚障害には全く見えない人だけでなく、見えにくい人もいて、その見え方は様々です。 ●いろいろなやり方 ・風景の楽しみ方は見るだけではありません。音や風、香り等を感じて風景を楽しむ人、体に響く花火の音を感じて楽しむ人もいます。 ●使いやすくするための工夫 ■まちの整備 ・観光スポット等を、音声ガイドで鑑賞できるところがあります。 ■人の対応 ・見えたものを言葉にすることで、視覚障害者と一緒に楽しむことができます。また伝えようとすることでより良く見ることになり、伝える人もさらに楽しめます。 見えたものを言葉にすると、楽しめる人が増えるんだね タイトル 次に、車いす使用者と会いました。どのお店で食事する? 6ページイラスト4 5人で話している様子 6ページイラスト4のセリフ           肩掛けカバンを持っている人|和食の良い店があるよ           足首サポーターをしている人|(リュックを背負った外国人を心配そうに見ながら)日本の食事は何でも食べられるかな           車いすに乗っている人|行ってみたいけど、その店は入口に段差があるよね。自由に選べず、広くて入りやすいファミリーレストランになることが多いんだ、、、 そうなんだ、、、 ●いろいろな人 飲食店を自由に選べない人は?ほかにたとえば ・病気やアレルギーがある、宗教上の理由(参照コラム2)で食べられない食材がある人 等 6ページイラスト5 牛乳パックと肉に×印 ●いろいろなやり方 ・車いすに乗ったまま店に入り食事をする人が多いですが、店のイスに乗り移る人もいます。 ・アレルギー等がある人は、自分が食べられない食材を知っていて避けています。 ●使いやすくするための工夫 ■まちの整備 ・段差にスロープを設置したり、テーブルやイスを移動しやすくすると、入りやすいです。 ・使用食材の表記があると、選びやすいです。 ■人の対応 ・移動の手伝いをします。 ※ただし、手伝いが必要か、どのように手伝うかを相手に確認することが大切です。 6ページイラスト6 車いすに乗った人を手伝おうとしている人 行きたい店や食べたいものを自由に選べるといいね 7ページ タイトル 次に、耳が聞こえない人と会いました。コーヒー買う時、どうする? 7ページイラスト1 5人が、バックをナナメにかけている人と出会っている様子 7ページイラスト1のセリフ           肩掛けカバンを持っている人|こんにちは 7ページイラスト2  バックをナナメにかけている人がスマホに文字を打ったものを、足首サポーターの人に見せている様子 7ページイラスト2のセリフ           バックをナナメにかけている人|コンビニエンスストアのコーヒー、どうやって買っていると思う?           足首サポーターの人|スマホを見せるのかな? 7ページイラスト3 コンビニエンスストアのレジで、バックをナナメにかけている人が店員にコーヒーメーカーを指さして伝えている様子 7ページイラスト3の解説文 店員さんに、コーヒーメーカーの方を指さして、身ぶりをして、、、 ●いろいろな人 レジでのやりとりが大変な人は?ほかにたとえば ・日本語が苦手な外国人 等 ●いろいろなやり方 ・言葉で伝える ・言葉が使えない時は、手話、指さし身ぶり、筆談、スマホで文字を打って見せる、文字を空中に書く(空書き)、口形(話す口の形)で伝える等、いろいろな方法があります。 7ページイラスト4 上記6つの方法(手話、指さし身ぶり、筆談、スマホで文字を打って見せる、空書き、口形)をイラストで掲載 ●使いやすくするための工夫 ■まちの整備 ・受付等にコミュニケーションボードがあると、指さしで伝えることができます。 ・受け入れする側も、様々な人がいることを理解しておくと、慌てずに対応できます。 7ページ写真1 江東区コミュニケーションハンドブックの表紙 7ページ写真1のキャプション コミュニケーションハンドブック【江東区】 ■人の対応 ・「いろいろなやり方」で示した方法でコミュニケーションがとれます。 コミュニケーションは、いろいろな方法でとれるんだね 次ページへ続く コラム2 宗教による違い 宗教上の理由で食べられないものや生活習慣の違いがある人がいます。例えばイスラム教では、以下のような考え方があります。 ハラール(許された行為・物)とハラーム(禁じられた行為・物)という考え方に基づく規範があり、ハラームを避けて生活すべきとされています。例えば、食における代表的なハラームは豚肉やアルコール飲料です。 参考「ムスリムおもてなしガイドブック」【観光庁】 コラム3 スマホは便利 スマホは便利なツールで、聞こえない人が、文字を入力してそれを見せたり、書いてもらったりすることができます。ファストフード等でメニューアプリがあると、それを示して買いたい物を伝えることができます。 でも、文字を入力するのにもちょっとした時間がかかります。簡単なことなら「指さし」や「身ぶり」の方が早いので、状況によって使い分けているそうです。 8ページ タイトル おいしそうなパンを売ってるよ 8ページイラスト1 6人が、パンと看板のある店の前で、頭にバンダナを巻いている人と出会っている様子 8ページイラスト1の解説文 入ってみたら障害のある人が働いているお店でした 8ページイラスト2 頭にバンダナを巻いている人が、タブレットでテーブルに並べられた商品の写真を撮影している様子 8ページイラスト2の解説文 6人の心の声(商品を並べて撮影してるね、何をしているんだろう) ●いろいろな人 働き方を工夫している人は?ほかにたとえば ・耳が聞こえない人 ・通勤が難しい人等 ●いろいろなやり方 ・話す言葉を文字にしてスクリーンに映し、他の会議参加者と内容を共有している耳が聞こえない人がいます。 ・在宅で仕事をする働き方もあります。 ●使いやすくするための工夫 ■商品を並べて撮影している理由は、、、 ・配達する商品をノートに記録した上で、机に並べて写真に撮り、別の人が記録と写真の内容を確認します。これで配達ミスが減りました。 ■その他の工夫 ・毎朝自分でやりたいことを選びます。 ・仕事はペアで行い、困った時は助け合います。 やり方を工夫するとできる人が増えるんだね タイトル 次に、持病がある人と会いました。電車に乗ろう 8ページイラスト3 足首にサポーターがある人が、もう一人の人と話している様子 8ページイラストのセリフ           もう一人の人|その日の体調により疲れやすいんだけれど、一見問題がないように見えるから、優先席に座ると視線が痛い時があって。。。 8ページイラスト4 電車の席に、ヘルプマークをつけている人と、外見上は特に問題がないように見える人が座っているのを、足首サポーターの人が見ている様子 8ページイラスト4のセリフ           足首サポーターの人|優先席に座っている人は、なんらかの事情があるって思えるといいよね ●いろいろな人 気づかいが必要だとわかりにくい人は?ほかにたとえば ・妊娠している人 等 ●いろいろなやり方 ・ヘルプマーク(参照コラム4)をつけている人もいます。 8ページ写真1 ヘルプマーク ・マタニティマーク等もあります。 8ページ写真2 マタニティマーク ●使いやすくするための工夫 ■人の対応 ・「障害者は優先席に座るものだ」と決めつけている人、「優先席があることで、それ以外の席はゆずらなくていい」と考えてしまう人もいます。 ・手助けや気づかいが必要な人であっても、自分の体調のことを知られたくないと考え「ヘルプマーク」をつけない人もいます。 その場に一緒にいる人の様子をみて行動することが大切なんだね 9ページ あなたにもありませんか? 苦手なこと、不便に思っていること 9ページイラスト1 電車に5人が乗車。リュックを背負っていた人がリュックを網棚に載せようとして、肩掛けカバンの人が見ている様子。 9ページイラスト1のセリフ           リュックを背負った人|ヨイショ           肩掛けカバンの人|私には網棚は高くて届かないので、荷物が重くても 持っていることが多いんだ           足首サポーターの人|(座席に座っている)荷物を持とうか?           肩掛けカバンの人|あっ、ありがとう 江東区UDワークショップ参加者に聞いてみました。 ○地図を読むのが苦手で、道に迷いやすいです。スマホアプリのナビで、進む方向を確認しています。 ○背が高いので時々頭をぶつけます。ぶつかりそうな所に、目立つ印があるとうれしいなあ。 ○男性にしては手が小さいです。女性にしては手が大きいです。手袋を選ぶ時は、メンズレディースに限定せず探すこともありますが、サイズが増えるとうれしいです。 ○夏の冷房が苦手なので電車では弱冷房車両を探します。もう少し弱冷房車両が増えると助かります。 これで《UDまちツアー》はおしまいです。 いろいろな仲間に出会えて、いろいろなやり方があることがわかったね! 9ページイラスト2 8人が全員集合している様子 コラム4 ヘルプマーク 義足や内部障害、妊娠初期の方等、外見からは分からなくても援助や配慮を必要としている方々が、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることで、援助を得やすくなるよう、東京都が作成したマークです。 参考 東京都福祉保険局ホームページ コラム5 多様性 〜まちにいるいろいろな人について〜 UDまちづくりでは、多様性を認め、包摂する社会のあり方が求められます。近年では、ダイバーシティ(多様性)とか、インクルーシブ(包摂的な)といった用語が使われることがありますが、いずれも、平等な社会のあり方をめざす考え方です。 ここでは「いろいろな人」についてその一部をご紹介してきましたが、他にももっといろいろな人がいます。たとえば、人とコミュニケーションをとることが苦手だったり、身体の性と心の性が一致しないことを社会に理解されず生きにくさを感じている人等もいます。 一人一人のやり方の違いを尊重し、すべての人の尊厳を守ることが、UDまちづくりの第一歩といえます。 10ページ 目的は同じ、やり方が違う 「いろいろな仲間と出会える《UDまちツアー》」、いかがでしたか。 それぞれの事情に合わせて、「やり方が違っている」ことがわかりました。 でも、実際には、まちを使えなかったり、使いにくかったりする人がたくさんいます。 それは「いろいろなやり方」をしている人がいることを考えたまちに、まだ十分にはなっていないからです。 まちが「いろいろなやり方」で使えるようになったら、もっと多くの人がまちを楽しむことができます。その考え方を、下の図に整理してみました。 1 同じ目的」を多様な人が達成したいと思っている ↓ 2 人によって「やり方」に違いがある ↓ 3 決まったやり方しかないとできない人がいる ↓ 4 「誰もが目的を達成」するために複数のやり方を用意したりやり方を工夫する 1 「目的」 例)行きたい飲食店で食べる 「登場人物」 まちツアーに誘った人(肩掛けカバンの人のイラスト)          和食屋に行きたかった車いす使用者(車いすに乗った人のイラスト) 2 「その人のやり方」 まちツアーに誘った人|歩いて店に入り、テーブルに座って食べる 車いすに乗った人|車いすで店に入り、車いすに座ったままで食べる 3 「社会や環境の現状」 まちツアーに誘った人|店を自由に選べる 車いすに乗った人|入れる店が限られる 4 「社会や環境に変わってほしいこと」 まちツアーに誘った人|不便を感じない、今のままで満足 車いすに乗った人|まちの整備 段差解消、店内通路を拡幅 人の対応 移動を手伝う 「結果」 まちツアーに誘った人、車いすに乗った人|目的達成! 人とやり方が違うことを、「できなくても仕方ない」「余計な手間がかかる」とマイナスに考えるのではなく、いろいろな工夫があれば、誰もが、そしてみんなで楽しめるようになります。 そうなった時、私たちは少し「ユニバーサルデザイン」に近づけたと言えます。 みんなで一緒に、誰もが使いやすく、楽しめる江東区をつくっていきましょう。 11ページ UDまちづくりについてのキーワード 多様性とUDまちづくり UDまちづくりは、「誰も」が対象です。にもかかわらず、「障害者」のためのまちづくりと誤解されてきた面があります。 これまで環境や社会的制度の整備の遅れによって、いわゆる「障害者」が不便を強いられたり、差別的な対応をされてきた経緯があり、その解消が重要な課題となってきたことも事実です。 しかし、「障害」と認識されなくても、「道に迷いやすい」「体が疲れやすい」等、誰もがどこかで困ったり、生きにくさを感じることがあるのではないでしょうか。こうしたことも含めて、多様性はすべての人(あなたも)が抱えうる「グラデーション(色や明るさが連続的に変化する様子)のようにある」ものということができます。 現実の社会では、性別、国籍、年齢、能力の違い等によって、様々なところで不平等が生じています。これらの解消もUDまちづくりがめざすことなのです。 《医学モデル》と《社会モデル》 今まで「障害」は主に本人の側に要因があると捉えられていたのですが、現在では社会の側に要因があるという捉え方に変わってきています。「障害」とは《本人の側の要因》と《社会の側の要因》の相互作用によって生じます。つまり、「障害」をなくすためには、《社会の側》も変わらなければならないのです。 《医学モデル》 たとえば、車いす使用者が段差のあるお店に入れないのは、足が不自由で車いすを使っているからだと考えがちです。つまり、本人の側に要因があるという考え方です。この考え方では、障害者は弱い立場にあり、助けられる存在です。 《社会モデル》 入口に段差がある店に入れないのは、環境側に問題があるから、という考え方もできます。入口にスロープがあったり、支援があれば、たとえ車いすを使っていても、買い物ができます。この考え方では、環境こそが「障害」なのです。 障害者の権利に関する条約(略称:障害者権利条約) 「医学モデル」と「社会モデル」の捉え方の違いは、「障害者の権利に関する条約」にも明記されています。この条約は、障害者の人権及び基本的自由の享有を確保し,障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的としたもので、2006年に国連総会において採択されました。日本は「障害者基本法」の改正や「障害を理由とした差別の解消の推進に関する法律(差別解消法)」等、関連する国内法を整備し、2014年にこれを批准しました。 合理的配慮 UDまちづくりで重要なのは、「複数のやり方を用意すること/やり方を工夫すること」です。たとえば、車いす使用者が買い物をしたいのに店の入口に段差があって入れない場合、その目的が達成できません。この時、買い物ができる人とできない人がいる=「差別」の状態が生じています。それを解消するために必要なことが「合理的配慮」です。 その人が求める時には、それが過重な負担でない限り、車いすが入れるように手伝ったり、入れなければ商品を持ってきたりして、買い物ができるようにしなければなりません。ほかにも、見えない人に商品を説明したり、聞こえない人に筆談をする、といった対応をすること等も「合理的配慮」といえます。障害者権利条約や障害者差別解消法では、差別的な行為をすることだけではなく、合理的配慮の提供がなされないことも「差別」であるとしています。 平等と尊厳 なぜ、差別がいけないのか。それは差別された人の「尊厳」を傷つけ、「人権」を侵害するからです。これらの考え方の基本にあるのは、すべての人の平等と尊厳を守るという考え方です。 誰もが自分のやり方で、やりたいことが達成できるようなまちをめざすこと、それがUDまちづくりなのです。 12ページ この冊子は、「令和2年度 江東区ユニバーサルデザインまちづくりワークショプ」に参加した区民と区職員が体験や意見交換を重ねた中からつくられました。 第1回 7月12日 日曜  13時30分から17時 ●オリエンテーション ・講座「UDってなんだろう?」  アドバイザーの川内美彦さんから、「社会モデル」や「尊厳」についてのお話を伺いました。 12ページ写真1 川内美彦さんが話している様子 参加者の感想より なぜUDが必要か、なぜ差別がいけないか、わかってきた ・ビデオ上映・寸劇  車いす使用者や視覚障害者にご協力いただき、日常生活で困っていることや工夫していることを映像に収め上映しました。 12ページ写真2 映像を上映している様子 第2・3回 9月5日 土曜 10時から12時30分 13時30分から16時 ●まちで考える|移動やお店  やり方が違う人でグループをつくり、「みんなで楽しめるUDツアー」を考えました。 参加者の感想より 工夫して違うやり方を見つけて、みんなで楽しめると、なんだか気持ちが良かった! 12ページ写真3 店の看板をのぞき込んでいるまち歩きの様子 12ページ写真4 車いす使用者が店に入れるかを考えている様子 12ページ写真5 意見のまとめをまとめた模造紙 第4・5回 11月7日 土曜 10時から12時30分 13時30分から16時 ●まちで考える|情報  「飲み物を買う」という同じ目的を設定し、それぞれがどこで買うかを考えました。 参加者の感想より 「全国どこでも商品やレジが変わらないので買いやすい」とコンビ二エンスストアを選んだ人が結構いた 12ページ写真6 ショッピングセンターの地図を指さしているまち歩きの様子 12ページ写真7 意見交換している様子 12ページ写真8 耳が聞こえない人からコミュニケーションの方法を教えてもらっている様子 第6・7 回 12月5日 土曜 10時から12時30分 13時30分から16時 ●様々な立場の人の「社会参加・働く」を考える  様々な人が働く、ふれあい工房「ゆめま〜る」を訪問しました。 参加者の感想より 「できないことがあった時、それは1つの方法を試しただけで、別の方法を考えればいい」というお話に目からウロコ 12ページ写真9 ふれあい工房ゆめま〜るで話を聞いている様子 12ページ写真10 会場で意見交換をしている様子 第8回 書面開催 1月25日 月曜から 2月1日 月曜 ●冊子案を検討する  冊子案を参加者に事前送付し、メールやFAXで意見をいただき、その内容を冊子に反映させました。 奥付 江東区 UD TRY! 4 「やり方が違う」を考えるユニバーサルデザインのまちづくり 編集・発行 江東区都市整備部まちづくり推進課         〒135-8383 東京都江東区東陽四丁目11-28 電話03-3647-9781 FAX03-3647-9009 作成・編集協力 場所づくり研究所プレイス         〒156-0044 東京都世田谷区赤堤3-3-18 電話03-3324-0365 FAX03-3324-0376 アドバイザー 川内美彦(アクセシビリティ研究所主宰/東洋大学人間科学総合研究所客員研究員)  デザイナー カタヤナギユウイチ イラスト 絹村亜佐子 2021年3月発行 印刷物登録番号(2)101号