江東区ユニバーサルデザイン(UD)まちづくりガイドブック クイズで学ぶ「目的は同じ、やり方が違う」 全8ページ 1ページ目 江東区公式Youtube動画クイズで学ぶ「目的は同じ、やり方は違う」とあわせて、UDまちづくりの理解をより深めるためのガイドブックです。 ガイドブックの目次と動画の関係(このガイドブックは動画の進行に合わせて作成しています) 動画 26秒 ユニバーサルデザインまちづくりとは ねらい UDの定義を知る 動画 54秒 まちの整備の工夫 ねらい 身近なまちから、UDに関心を持ってもらう 動画 4分20秒 UDの考え方の基本=目的は同じ、やり方が違う ねらい 「目的は同じ、やり方が違う」を理解する 動画 6分4秒 ひとの対応の工夫 ねらい 相手に聞くことが大切なことを理解する 「まちの整備の工夫」と「ひとの対応の工夫」を整理 動画 10分30秒 まとめ ねらい 自分にもできることを考える 「UDまちづくりのキーワード」と「江東区のUDまちづくりの取り組み」 2ページ目 動画 26秒 ユニバーサルデザインまちづくりとは ねらい UDの定義を知る この動画は、UD博士がKotoさんに「『ユニバーサルデザインまちづくり』ってどういうことだと思う?」との問いかけから始まります。 「だれもが使いやすく安全で安心なまちをみんなで考えてつくっていくこと」とkotoさんは答えています。江東区では、もう少し詳しく次のように定義しています。 2ページ目の画像1 タイトル「ユニバーサルデザインとは?」と、UD博士とkotoさんが話している動画の画像 もっと学ぼう! 江東区の「ユニバーサルデザイン(UD)まちづくり」の定義 年齢・性別・国籍・能力などの違いを尊重しつつ、誰もが使いやすく安全で安心な環境をつくるため、住民と事業者および自治体が協働ですすめるまちづくり もっと学ぼう! 「だれも」とは? 社会の環境や制度の整備の遅れによって、障害者などは不便を強いられ、差別的な対応をされてきた経緯があります。そして、その解消が重要な課題となってきたことにより、UDまちづくりとは「障害者」のためのまちづくりと誤解されることがあります。 しかし、UDまちづくりとは障害者という点にのみにとらわれず、年齢・性別・国籍・能力などあらゆる違いを考慮に入れて進めていく必要があります。 たとえば、「障害」と認識されなくても、「道に迷いやすい」「体が疲れやすい」など、ひとによって能力の違いや身体的な違いがあります。近年では、性別も男女の2つに分かれるものではないという考え方も広まっています(※)。 このように考えていくと、だれもが少しずつ異なることに気づくことができます。このことを念頭に置いて全てのひと(=だれも)が使いやすいまちづくりを考えていく必要があります。 ※性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する理解を増進する施策 内閣府ホームページ 性的指向・ジェンダーアイデンティティ理解増進 https://www8.cao.go.jp/rikaizoshin/index.html 3ページ目 動画 54秒 まちの整備の工夫 ねらい 身近なまちから、UDに関心を持ってもらう UDに関心を持ってもらうため、身近なまちから見ていきます。 多くの人が何気なく使っている「横断歩道」ですが、あまり気づかれていない工夫もあります。 横断歩道を使いやすくするには立場により異なった意見があり、それを調整して整備が行われています。視覚障害者は安全な歩道に入ったことを確認できるように横断歩道と歩道の間に段差を望む一方、車いす使用者はできるだけ段差がない平坦な整備を望んでいます。このように、立場の違いにより望むものが異なる場合も、できるだけ多くのひとが使いやすいように調整を重ねながらまちは整備されています。 3ページ目の画像1 タイトル「まちの整備の工夫」が書かれた動画の画像 もっと学ぼう! 横断歩道と歩道の間の段差は2cmが標準 「道路の移動等円滑化に関するガイドライン(国土交通省道路局令和6年1月)」には、《横断歩道に接続する歩道等の部分》の考え方として、「視覚障害者の安全かつ円滑な交通を確保するためには、歩車道境界を明確に示さなければならない。このため、歩道等と横断歩道を設ける車道等の部分との境界には、車椅子使用者が困難なく通行でき、かつ、視覚障害者(盲導犬使用者を含む。)が歩車道境界部を白杖や足により容易に認知できるよう、高さ 2cmを標準とした段差を設ける」とあります。 もっと学ぼう! まちの中のUD発見をしてみよう まちには、UDの整備がたくさんあります。たとえば、信号周辺では、下記のような整備があります。 音響信号の音の違い 動画では「カッコー」が流れていますが、「ピヨピヨ」という音もあります。 詳しくは、下記ホームページをご覧ください。 社会福祉法人日本視覚障害者団体連合ホームページ 音響式信号機 http://nichimou.org/impaired-vision/barrier-free/acoustic-signal/ 警視庁ホームページ 信号機のバリアフリー化について https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/koreisha/accessibility.html 視覚障害者誘導用点字ブロックは2種類 誘導ブロック(線状ブロック)と警告ブロック(点状ブロック)の2種類があります。詳しくは、下記ホームページをご覧ください。 社会福祉法人日本視覚障害者団体連合ホームページ 点字ブロックについて http://nichimou.org/impaired-vision/barrier-free/induction-block/ 4ページ目 動画 4分20秒 UDの考え方の基本=目的は同じ、やり方が違う ねらい 「目的は同じ、やり方が違う」を理解する 横断歩道を見ただけでもたくさんの工夫があり、「たくさんあって覚えられない」と言うkotoさんに、「覚えようとするのではなく、「『考え方の基本』を理解して欲しい」とUD博士は伝えます。 動画では、「移動する」「話をする」「文字を読む」という3つの目的に対して、4つの「やり方」を示しています。この4つのやり方の違いに優劣はなく、そのひとにあったやり方があることを理解することが大切です。 4ページ目の画像1 「UDの考え方の基本 目的は同じ、やり方が違う」のタイトルが書かれた動画の画像 もっと学ぼう! やり方に違いがあっても目的が達成されるまので流れ たとえば、車いすを使っているひとは外食をする時に「入れる店」を探すことが多いという声を聞きます。しかし、「行きたい店で食べる」ことはだれもが同じく望むことではないでしょうか。その前提に立てば、ひとによりやり方が違うことがあり、問題を解決するにはそのやり方の違いに対応すれば良いという、基本的な考え方が理解できると思います。 ひとによりやり方に違いがあった場合の目的が達成されるまでの流れを、下記に示しました。 4ページ目の画像2 目的「行きたい店で食べる」から、結果「目的達成」までを、2人の登場人物別に示した一覧表   目的 行きたい店で食べる (「同じ目的」を多様なひとが達成したいと思っている)登場人物 いっしょにランチする仲間 (ひとにより「やり方」に違いがある)そのひとのやり方 歩いて店に入り、店のイスに座る (社会や環境がいろいろな「やり方」に対応していない)社会や環境の現状 店を自由に選べる (「誰もが目的を達成」するために、検討・調整を経て、複数のやり方を用意したり、やり方を工夫する)社会や環境に変わってほしいこと 不便を感じない、今のままで満足 検討・調整 自分とは違うやり方の人がいた時、できることを考えてサポート 結果 目的達成 目的 行きたい店で食べる (「同じ目的」を多様なひとが達成したいと思っている)登場人物 和食屋に行きたい車いす使用者 (ひとにより「やり方」に違いがある)その人のやり方 車いすで店に入り、車いすで席につく(店のイスには座らない)。 (社会や環境がいろいろな「やり方」に対応していない)社会や環境の現状 入口に段差があったり、通路が狭かったりして、行ける店が限られる (「誰もが目的を達成」するために、検討・調整を経て、複数のやり方を用意したり、やり方を工夫する)社会や環境に変わってほしいこと 店の整備|車いすのままで入れるようにしてほしい。人のサポート|車いすの移動の手伝いや、動きやすい環境づくりをしてほしい。 検討・調整 店の整備|段差解消や、スロープを用意する。テーブルを動かすなどして通路幅を確保する。車いすでつける席を確保する。人のサポート|車いすの移動や、通路幅などを確保する手伝いをする。 結果 目的達成 5ページ目 動画 6分4秒 ひとの対応の工夫         ねらい 相手に聞くことが大切なことを理解する 動画では、3つのシーンを見てもらいます。 舞台は、商品を販売するお店での、店員さんとお客さんのやりとりです。 みなさん、どんな感想を持ちましたか? 高校でUDまちづくり講座(動画11:15)を行った時には、高校生から「良かれと思っても自分の勝手な思い込みのこともあり、かえって相手に迷惑になってしまうこともあると知った」という感想がありました。 「必ず相手に確認することが大切」ということを、クイズでも繰り返しお伝えしています。 5ページ目の画像1 タイトル「ひとの対応の工夫」が書かれた動画の画像 もっと学ぼう! 接遇やコミュニケーションの方法について 動画の中では接遇については触れていませんが、UDまちづくり講座の中ではいくつか接遇やコミュニケーションについても体験しました。その例をお伝えします。 1つめのシーンでは、白い杖を持ったお客さんが登場します。 お客さんがガイドするひとの肩か肘に触れる(背の高さのバランスなどにより、どこを触れるかは変わる)。 ガイドするひとは、お客さんの半歩前に立って、まわりの状況を伝えながら歩く。 2つめのシーンでは、手話で話すお客さんが登場します。 手話ができないひとでも、コミュニケーションをとる方法があります。筆談、空書き、ジェスチャー、口形、スマホで文字を打つなど。 3つめのシーンでは、車いすを使用するお客さんが登場します。 車いすで入れない場所がある時は、商品を持ってくる、その場で可能ならば通路を広げるなどの方法が考えられます。 クイズの選択肢には「他の店を紹介する」というのがあり、迷われた人もいるかもしれません。実際に他の店を紹介することもあるかと思いますがいきなり紹介するのではなく、まずはコミュニケーションをとり相手の話を聞くことが大切です。 接遇については、下記ホームページも参照してください。 ユニバーサルツーリズムの推進 観光庁 高齢の方・障害のある方などをお迎えするための接遇マニュアル宿泊施設編 https://www.mlit.go.jp/kankocho/seisaku_seido/kihonkeikaku/kokunaikoryu/kaitaku/universal-tourism.html 6ページ目 「まちの整備の工夫」と「ひとの対応の工夫」の整理 「まちの整備」と動画では表現していますが、さまざまな立場のひとを想定してさらに大きく環境整備という視点で考えます。そして、まず環境整備を、「設備」「情報」「製品」の3つの視点から説明します。 設備 横断歩道を視覚障害者が渡れるような誘導ブロックの整備や、車いす使用者も含めたいろいろなひとが使えるトイレの整備など。 情報 視覚障害者への音声情報の提供、聴覚障害者への手話通話や音声を文字変換した情報の提供など。 製品 ボトルの突起でわかるシャンプー、手の力が弱い人でも使いやすい食器のデザインなど。 以上のような環境整備が行われたとしても、多様なニーズに合うだれもが使いやすい環境整備は時間がかかり難しいことも多いので、ひとの対応と両輪で取り組むことが大切です。 6ページ画像1 左右に2つの枠がある。左の枠には「環境の整備 さまざまな立場の人を想像して事前に整えておく」と、「情報」「整備」「製品」の文字が3つの輪の中に書かれている。左の枠から右に矢印が出て、「環境整備をしても使えない人がいる時には」とあり、右の枠には「ひとの対応 相手に聞いて、ひとの対応で『使える』ようにする」と書かれている。 もっと学ぼう! 「合理的配慮」 「障害者差別解消法」では「全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的」として、平成28年(2016)に施行されました。 この法律では、行政機関や店舗などの事業者に対して、「不当な差別的取扱」の禁止と、「合理的配慮の提供」を義務付けています。 環境の整備が不十分で目的が達成できない時に、障害者からこうした手伝いが欲しいなどの《意思表明》があった場合、コミュニケーションをとりながら対応できるかどうかを考え、万が一対応が難しそうな時には代替案を提案したりしながら《建設的対話》を行い、双方が納得できる《合理的な配慮》を提供します。 法律は、行政機関等や事業者に対して合理的配慮を義務付けていますが、まちの中で困ったひとがいた時にちょっと手助けする時も同じです。相手にどうしたらいいかを聞いて、できることは行い、難しい時には相談するなどコミュニケーションをとることが大切です。 6ページの画像2 不当な差別的取扱い 行政機関等も事業者も禁止          合理的配慮の提供 行政機関等も事業者も義務 参考 内閣府パンフレット「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されました」 https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai_leaflet-r05.html 7ページ目 動画 10分30秒 まとめ ねらい 自分にもできることを考える 「今日は新しいことをたくさん知ることができたけれど、自分にもできるかな」とちょっと心配するkotoさんに、UD博士は「最初はとまどうことがあるかも知れないけれど、コミュニケーションを重ねてお互いを知り、理解を深めていけばいいんだ」と伝え、「UDまちづくりをみんなで取り組もう!」と唱和しています。 7ページ目の画像1 まち歩きをしている様子の動画の画像 やってみよう! 声かけからはじめよう 「UDまちづくりをみんなで取り組もう!」と言われても、実際何をしたらいいかわからないかもしれません。江東区のワークショップでは「まずは声かけが大切だ」と声をかける時のお互いの気持ちや具体的な声かけの例を整理したことがあります。 江東区ホームページ UD TRY! 自然な声かけからはじめよう! https://www.city.koto.lg.jp/390115/udtrycommunication.html まずは、「座りますか」と電車やバスで席をゆずったり、エレベーターでまだひとが乗れそうだったら「乗れますよ」と声かけするなどからトライしてみてはいかがでしょうか。 こんなことから慣れていくと、次第に困っていそうなひとがいた時に「何かお手伝いしますか」と声をかけられるようになっていきます。「いいです」と言われる時もありますが、その時はお手伝いの必要がなかったということです。 たとえば移動の途中:「電車のシート」 電車で座っていたら、白杖を使っている視覚に障害があるひとが乗ってきた A:どうぞ、席に座りますか?(声かけして気づかないようだったら肩などに合図して) B:ありがとうございます。でも、次の駅で降りるので、ドアの近くにいます A:そうですか、わかりました 7ページ目の画像2 電車の車内で立っている視覚障害者に「席をどうぞ」を声かけしているイラスト たとえば混雑した駅や建物:「エレベーター」 エレベーターの前で入れるかどうか迷っているひとがいる A:どうぞ、もう一人乗れますよ。(奥の人に)少し詰めていただけますか B:ありがとうございます。助かります 7ページ目の画像3 エレベーターの前にいるベビーカーを押している人に、中から「乗れますよ」と声かけしているイラスト 8ページ目 「UDまちづくりのキーワード」 ・医学モデルと社会モデルの考え方 従来、「障害」は主に本人の側に要因があると捉えられてきたのですが、現在では社会の側に要因があるという捉え方に変わってきています。「障害」とは《本人の側の要因》と《社会の側の要因》の相互作用によって生じます。つまり、「障害」をなくすためには、《社会の側》も変わらなければならないのです。 《医学モデル》 たとえば車いす使用者が段差のあるお店に入れないのは、足が不自由で車いすを使っているからだと考えがちです。つまり、本人の側に要因があるという考え方です。この考え方では、障害者は弱い立場にあり、助けられる存在です。 《社会モデル》 入口に段差のあるお店に入れないのは、環境側に問題があるから、という考え方もできます。入口にスロープがある場合や支援がある場合は、たとえ車いすを使っていても買い物ができます。この考え方では、環境こそが「障害」なのです。 ・障害者の権利に関する条約(略称|障害者権利条約) 「医学モデル」と「社会モデル」については、「障害者の権利に関する条約」に考え方が示されています。この条約は、障害者の人権及び基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的としたもので、2006年に国連総会において採択されました。 日本は、「障害者基本法」の改正や、「障害者差別解消法」(参照p6)など、関連する国内法を整備し、2014年に条約に批准しました。 「江東区のUDまちづくりの取り組み」 江東区では住民参加のワークショップを開催しながら、区民・事業者・区が協働して、UDまちづくりを広げてきました。話し合ったことが実際の整備や、冊子や動画づくりに反映されたり、区民主体による出前講座活動へと展開しています。 詳細は区役所のホームページをご覧ください。 ■ユニバーサルデザインまちづくりワークショップ https://www.city.koto.lg.jp/machizukuri/toshi/yasashii/workshop/index.html ■江東区ユニバーサルデザイン関連冊子等 https://www.city.koto.lg.jp/390115/yasasiimachizukuri.html ■動画 UDを「体験」して「感じて」みよう! 4つの体験レポート https://www.youtube.com/watch?v=_A4KgRQd8ro ■動画 UDを「体験」して「感じて」みよう! 4つの体験レポート(音声ガイド付き) https://www.youtube.com/watch?v=an5RdWODrmE ■動画 ユニバーサルデザインまちづくりを広げよう!見て・演じて・感じるUDまちづくり講座ができるまで「高校生といっしょに編」 https://www.youtube.com/watch?v=1ijQBjNQ6do 編集・発行 江東区都市整備部都市計画課 〒135-8383 東京都江東区東陽四丁目11-28 電話 03-3647-9781 FAX 03-3647-9009 作成・編集協力 場所づくり研究所プレイス 江東区ユニバーサルデザインアドバイザー 川内美彦(アクセシビリティ研究所主宰) デザイナー カタヤナギユウイチ